マリオアドバンスシリーズにおけるキャラクターボイス(ボス編)

長らく放置していた『マリオアドバンス』のボイス記事、最後はボス編です。

※キノピオ編はピーチ編と内容重複するためオミットしました。許せパワー系キノコ…。

 

※カッコ内は英名

ドン・チュルゲ(Mouser)

ワールド1&6のボス。爆弾を投げつけてくるネズミ。

 

“Here, have some bombs!”
(ほら、バクダン食らってきな!)

[here]は場所を心理的に近い場所を指す代名詞というのはご存知だと思いますが、人の注意を引くときに「ほら」とか物を手渡すときに「はい」と言う際に間投詞的に用いることがあります。

[have]も様々な意味・用法がありますがここでは「食べる」の意味でしょうか。意味合いとしては「バクダンをお見舞いしてやるよ」といった感じかな。

 

“No way!!”
(そんなハズは…!!)

[No way]は[no]の強意です。「まさか!」「そんな!」等と訳されることが多いです。

英語では現実を直視したくない時に[No]とよく言いますが、辛い現実に[No]を突きつけている、拒絶しようとしていると考えると理解しやすいかも。

まあ、まさか自分が負けるとは思っていなかったということでしょう。

 

ガブチョ(Triclyde)

ワールド2のボス。炎を吐き出してくる。

 

“Step right up if you’re ready to get toasted!”
(かかってこいよ、こんがり焼いてやるからよぉ…!)

[toast]がパンを焼くときに使う動詞だというのはお分かりかと思います。パンを焼くように、こんがり焼くことを意味します。

“if you’re ready to get toasted”は直訳で「こんがり焼かれる準備ができているなら」となりますが、端的に言うと「さっさと焼かれにこい(焼いてやる)」という風な挑発的セリフですね。

挑発セリフであることを考慮して”step right up“は「かかってこいよ」と訳しました。しかし本来は客引きで使われる表現なので、「こっちにおいで…こんがり焼いてあげるから」と誘惑するような翻訳にしても問題ありません。

ちなみに挑発として「かかってこいよ」と言いたい時は[Bring it on!]を使うと良いでしょう。

このセリフ、実際に聞けばわかるのですが”toasted”にアクセントが置かれています。自慢の炎でこんがり焼くことが強調されているのでしょうね。

 

“IMPOSSIBLE!”
(ありえねぇ…!)

[impossible]は「ありえない」「不可能だ」という形容詞。ドン・チュルゲ同様に自身の敗北に驚いているのがわかります。

こういうシンプルなセリフでも、翻訳者によって和訳にも幅が出てくるのが面白いところ。明らかな語訳はともかく、翻訳に正解はないというのが真だと私は思っています。

Phrasal verb
step right up: 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい(客引きの口上)
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ロボキャサリン(Robirdo)

ワールド3のボス。原作には登場しない『マリオアドバンス』オリジナルのキャラクタ―。ロボであること以外の詳細は不明。声は機械音声。セリフは赤キャサリンと一部共通。

 

“You’ve come a long way!”
(よく来たわね!)

現在完了形の文です。ご覧の通り「長い道のりを来た」ということを言っています。

 

“How could you!?”
(なん…だと…!?)

[How can/could you…]は「どうしてそんなことができるのか」という意味になるのですが、文脈によって驚きを表したり不快感を示したりできる表現です。本来なら後に動詞が来るのですがここでは間投詞に近いはたらきをしています。

あえて元の文に直すなら”How could you beat me!?“とするのが無難でしょうか。

和訳としては驚きで訳すのが適当かなと思います。単に相手を非難する表現なら[How dare you…]という表現もありますし、後ろに言葉が続いていませんので今わの際に絞り出した驚きの声、という解釈でいいんじゃないでしょうか。

敗北による怨嗟の色を濃くしたいなら「オマエなんかに…!」とひねって訳すのも面白いかもしれません。

 

ヒーボーボー(Fryguy)

ワールド4のボス。火を噴いてくる。

 

“I’m too hot to touch!”
(オレに触れるとヤケドするぜ!)

直訳「オレには熱すぎて触れないぜ」

[too~too…]構文ですね。よく「~すぎて…できない」「…するには~すぎる」と訳されます。大学受験だと[so that]構文での書き換えが頻出します1

 

“Hot touch!”
(熱いよ!)
アドバンスの音質が悪いのも相まって、ここのセリフは諸説あります。私はこう聞こえたのでこれに一票。

英語圏の人たちでもかなり意見が分かれるようです。

“I’m done!” ”What the” ”Stop that” 等々。

 

チョッキー(Clawgrip)

ワールド5のボス。岩を投げつけてくる。

 

“Ah! You’ll make a tasty treat!”
(おおっと、ウマそうなごちそう発見!)

主語こそ二人称ですが意味合い的には一人称で訳したほうがいいでしょう。

ここでの[make]は[become]と同じような意味。割と使用頻度の高い用法です。単純未来のwillを用いることで「お前は上手い飯になる」と言っていることから、意味合い的には「お前を食ってやる」という内容になります。

 

“Aaaargh! You got me!”
(アァァァァ!やられた!)

[get]には「倒す、やっつける(kill)」の意味があります。ここでは獲物に逆に狩られたという場面でもあるので「アァァァ!食われた―」という訳も悪くないかも。

何か議論をしていて論破されてしまった時などに[you got me]というと一本食わされたとか、参ったというフレーズになります。

[you got me there(それはやられたな)]という言い方もします。[there]は「その点で」という意味です。

 

キャサリン(Birdo)

ボスステージ以外で登場する中ボス。マリオファミリーでももはやお馴染みの顔といったところでしょうか。

最近では時代の流れか、オカマ設定も無くなったとか…?

色によって強さ、セリフが異なります。ピンク・緑・赤の三種類が存在します。各色2つの登場ボイス、1つの撃破ボイスがあります。

セリフは色分けして区別しています。

 

This is as far as you go!
(ここから先は通さないわよ!)

[as far as]は「~まで」。

近い場所を指す代名詞としては[here]がありますが、場所を紹介する際「ここは~です」という意味で[Here is~]とはしません。[Here is~]は「ここに~があります」という意味になるからです2

「ここは~だ」と言いたい時はこのセリフのように[this]を用います。「ここ(This)までがお前の進むところだ(as far as you go)」=「これ以上先には行かせないぞ」といった感じになります。

なんとしても先に行かせまいとするボスらしいセリフだと思います。

「アナタはここまでよ!」としてみても良いかもしれません。

【参考】as far asは前置詞的にも使えるぞ!
Ex: I traveled as far as Tokyo last week.
(先週東京まで旅行に行ってきました。)

 

Well, hello there!
(あらごきげんよう)

 

“No!”

被弾時のセリフ。

 

I’ll remember this…!
(覚えてなさい…!)

正確には覚えておくのはキャサリンの方なんですが、こうしたほうが日本語っぽいかなって。

 

I’m gonna finish you off!
(決着をつけてアゲル!)

[gonna]は[going to]の口語。[finish off]は「やっつける」「殺す」「とどめを刺す」など。

マリオのゲームで「殺す」という表現はいかがなものかと思うので「ケリをつける」くらいが落しどころかなと思います。

 

I’m ready for you this time!“ 
(今度はそう上手くいかないわよ!)

「今回はお前のために準備してきた」ということは、対策を講じてきたということです。

各々のキャサリンが同一個体かは不明ですが、”this time“とあることから「前回のようにはいかないわよ」というのがこのセリフの核となっていることは明らかです。

 

You gotta lot of nerve!“ 
(生意気な奴め!)

[a lot of nerve]で「図々しいやつ、生意気なやつ。神経が太い。」の意。[gotta]は[have got a]の口語表現。

【参考】have the nerve to do~で「図々しくも~する」という意味になる。
Ex: You have the nerve to tell me how to do it. You’re only a novice.
俺に指図するなんて生意気な奴だ。素人のくせによ。

 

Help…

ここも諸説あり。単に[Aaaaargh!(グァァァァァ!)]と悲鳴を上げているようにも聞こえます。

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マムー(Wart)

ワールド7のボス、ラスボス。野菜が大キライ。

 

“I am the great Wart! Wah, ha ha!!”
(ワシが偉大なるマムー様である!ワーハッハ!!)

固有名詞にも定冠詞がつくことがあります。もちろん[the]を抜いて[great Wart]としても構いませんが、あったほうが限定的な意味になります。「ワシこそが!」というアイデンティティに基づいた言い方であるとも言えるでしょう。

 

“Noooo! Ribbit, nooooooaaarrrgh!!
(ゲゲゲロォッ!そんなバカなぁぁぁぁぁ!!

何て訳すか迷いました…。[no]という言葉だけで色んな訳し方ができますから、日本語として自然な形にするのが難しい…。

逐語訳は諦め、カエルキャラクターとして言いそうな感じにしてみました。

[ribbit]は蛙の鳴き声。「ゲコゲコ・ケロケロ」など。

 

ちなみに攻撃をヒットさせてもNo, ribbit!”と言います。

 

キャラクターの命名について

日本では特に子供向け(全年齢)のゲームに顕著ですが、キャラクターの名前はオノマトペ(擬音語・擬態語)に則って付けられているのがわかります3。『マリオアドバンス』ではドン・チュルゲ、カブチョ、ヒーボーボー、チョッキーが該当します。ボス7体中4体がこの法則によってネーミングされています。

日本語というのは英語に比べ非常にオノマトペの数・種類が豊富です(恐らく世界の言語の中でも)。

一方、英語にもオノマトペは存在しますが数が非常に少ない。比較的知名度が高いもので[meow(ニャーという猫の鳴き声)]等が挙げられるかと思います。

しかし、漫画や小説などの創作物でオノマトペなしに動作や所作を表現するのは難しい。

そこで、対応するオノマトペが存在しない場合どうするかというと、動詞の原形を当てます。

ドンドンと足踏みしていたら「STOMP! STOMP!」と書かれるでしょうし、頭をポリポリ掻いていたら「SCRATCH SCRATCH」という具合に。

 

さて、命名の話に戻ります。

日本版はオノマトペを多用したネーミングなのに対し、英名は外見的特徴に則ってつけられていますよね。簡単にですが順に見ていきましょう。

 

Mouser

ネズミだからマウス。至極単純なネーミングですが辞書で[mouser]を引くと以下の定義がヒットします。

mouser: 1.ネズミを捕る動物、主に猫のこと。
2.(獲物を)求めるようにうろつく人

辞書的な定義が関わっているかはわかりませんが、2の意味でつけられたのでしょうか?

 

Triclyde

[tri]は言うまでもなく「3つ」を意味する接頭辞です。[triangle][triceps(三頭筋)]などがそうです4

[tri]は当然三つ首のことを指しています。

では[clyde]とは何でしょうか。

 

調べてみたところ「1.抜作、遅れているやつ 2.知力;頭脳」の意味があるようです。

頭が三つあるわけですから、やはり2の意味で使われているような気がしますね。「Step right up」というセリフから、獲物を油断させておいてボリボリ食ってしまうような狡猾さもうかがわせているようにも見えます。

 

Fryguy

[fry]は油を使って加熱調理すること全般を指します。料理の際に用いる火がモチーフなのでしょうね。

同じく『マリオUSA』のヘイホーも似たようなネーミングです(Shy guy)。

 

Clawgrip

[claw]は「爪・ハサミ」、[grip]は「掴むこと、握力」。

それこそキングラーのようにハサミギロチンでもしてくるならともかく、実際にやることは自慢のハサミで岩投げてるだけなんだよなあ…。

ちょっと名前負けしてるように見えますねw

 

Birdo

これに関してはゴメンナサイ、語源がわからないです…。

リサーチ不足にもほどがあるぞ昔の俺!

[bird]の最も一般的な意味が「鳥」だというのは誰でも知っているでしょうが、イギリスの俗語用法で「女の子,娘」という意味もあります。

そして、[do]は「する」という意味のほかに「気取る,ふるまう」という意味があります。つまり、[bird+do]で「女の子らしくしている」という感じの造語になっているわけです。

キャサリンにオカマ設定があることを考えると自然なネーミングだと言えるでしょう。

 

Wart

「コブ」とか「嫌な奴」という意味があるようです。敵キャラだからそりゃまあ嫌な奴ではあるんでしょうが。

 

最後に

やーーーーと『マリオアドバンス』の記事も最終回を迎えました。めんどくさいからと放置しすぎましたね…。

これからはある程度目途を立てた上で書こうと思います。

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  1. 身も蓋もない話、受験校のレベルによりますが []
  2. 日本語に訳した場合一見近い意味になることはあるでしょうが。 []
  3. 主な例としてはピカチュウ、ジバニャンなど。 []
  4. ちなみに「2」は[bi]、「1」は[uni]となります。 []
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